第二話 「一本のネジ」
2026/07/10
僕はネジ、名前はまだない。
一本の小さなネジです。
もちろん、工場で生まれました。
たくさんの仲間と一緒に箱へ入れられ、待っている。誰かが手に取ってくれる日が来るのを。
僕には特別な才能はありません。
小さいし、目立たないし、誰かに褒められることも、ない。
父さんも母さんも、そうでした。目立たない、普通のネジ。おじいちゃんやおばあちゃんも・・・・・・。
ある日、一人の少年が私を手に取りました。
「うーん?」
違いました。僕じゃない、みたい。
また箱へ戻されます。
次の日。
また違う人が私を手に取ります。
「少し長いな。」
また戻されます。
何度も何度も。
どれくらいの時間が経ったのだろう。周りにいた仲間たちは、だいぶいなくなってしまった。お母さん・・・・・・、孤独が僕を取り囲むようでした。
変わらない毎日。日が昇り、夜がおとずれる。静かで、単調な日々のくりかえし。
私は必要とされていないのかな、ふと気がつくと、そんなことを考えたりする自分がいました。
・・・・・・そしてある日、一人の女性が私を手に取りました。
「あったー!これよ。」
女の人は嬉しそうに僕を取り上げてくれた。僕が役に立つ時が来ました。
締め付けられます。
ぎゅっと。
正直、少し痛い。
でも、不思議でした。
苦しいのに、嬉しかったのです。
僕がいることで、扉がしっかりと締まりました。
それからず長い月日が流れました。何年経ったのか・・・・・・。
誰も私の名前を知りません。
しかし、私の毎日はとても充足しています。
誰かが安心して暮らせるのは、
誰かが安全に働けるのは、
目立たない私たちが、今日もそこにいるからです。
私を取り上げてくれた女の人は、毎日仕事に出かけます。
朝起きて出かけ、夜帰宅します。
たまに「あー、疲れたー」
と声に出して独り言を言ったりしますが、明るい女性です。
毎日毎日、働いて、大変そうだけど、どこか幸せそうな人です。
彼女の美しい横顔は、それを物語っています。
毎晩決まったホットミルクを飲むと、部屋を後にします。
私は、遠くに彼女がそっとドアを閉める音を聞いて、今日の終わりを感じるのです。
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