第十九話 「旅の途中」(前編)
2026/08/06
「おう、山ちゃん、今日はずいぶん遅いね~」
「いやー、会議が長引いちゃってね。もう今から帰って飯の支度をするのもなんだし、寄らしてもらいました。」
「何言ってるんスか、山さん。大将なんか山ちゃんに食べさせたいって、特別太ったアジ、他に出さないで待ってたんスよ。」
悟が、ビールを運びながら口を挟んだ。
時間が遅いせいで、お客さんもまばらな居酒屋「我が家」に悟の元気な声が響き渡った。
「そうなの?大将?嬉しいねー。じゃまず、ビールからもらおうかな」
「はいよッ」
(いつもながら、癒されるなー、「我が家」は)
・・・・・・飲みながら少し飯が腹におさまると、山本は少し落ち着いた。
「ふー・・・・・・、今日は疲れたなー」
「なんか疲れてるね。今日、入って来た時、一瞬別人かと思ったよ」
「ホントに?」
「ほんと。ホントにほんと。だんだん年とって来たんだから、健康にも気を使わないとダメだよ。」
「そだよね~」
その時、山本は、店の隅で飲んでる男に気が付いた。。
「あれ、大将、あそこで飲んでるの実船(みふね)君?」
「そう、そうだ、言おうと思って忘れてた。実船君、来たんだよ。」
「瘦せたな~、別人だね。いつから、いたの?」
「・・・・・・山ちゃんが来る、三十分くらい前かな?」
「しっかし、久し振りだな~」
山本は、ジョッキを持って立ち上がった。
「大将、良い?席移っても?」
「もちろん。おーい、さとる!山ちゃんのコレ。実船君とこに。」
「りょーかい!」
「・・・・・・実船君、久しぶり。いつ以来?」
「ああ、山さん、半年ぶりですよ。「我が家」に来たの」
「いや、我が家って、会社はもう来てるの?」
「いえ、まだ・・・・・・。仕事って状態じゃないんですよ・・・・・・。」
「でも、飲んでるんだ」
「ええ」
「・・・・・・。」
「ふふ、まさか、山さんが説教ですか?」
「まさか?!それこそ、まさかだよ。」
ふたりは笑った。
「で、どうなの?大丈夫?」
「まあ、大丈夫じゃないですね。」
「そう、飲んで良いの?」
「あんまり良くないけど、これないと生きてても面白くないから。・・・・・・チョットだけ。」
「医者はなんて言ってるの?」
「死にたくなければ、飲むな、ですって」
「それなのに、・・・・・・飲んでるの?」
「ちょっと、ですよ。僕だって、死にたくないんで。」
「ちょっとって・・・・・・、相変わらず無頼だな~、実船君は。」
「ははは、でも、倒れた時はビックリしましたよ。まあ、ビックリしたっていうか、目の前が急に傾いて、頭を大きなハンマーで殴られたみたいな、衝撃があって・・・・・・、起き上がろうとしたとこまでは記憶にあるんですが・・・・・・。その後真っ暗に・・・・・・。」
「それ、ハッキリ覚えてるの?」
「いえ、何となく薄っすらとした記憶があるんですよ。
一緒に飲んでた友達が、急に僕が立ち上がって、不思議に思った瞬間、左斜め後ろに反り返るみたいに倒れたって・・・・・・、僕はそういうのは覚えてないんですが、意識が消えていく感覚は、あった気がします。」
「ふーん、そうか~。入院してるって、聞いたけど、まさかそんなことがあったなんて知らないから・・・・・・」
「・・・・・・、山さん今日は、時間あるんですか?」
「ああ、別に用事はないけど。まあ、明日また早いから、ほどほどならね。」
「ふふ、良くいいますよ。まあ、いいですけど・・・・・・」
と言って、実船は、おかしな話を始めた・・・・・・。(つづく)
----------------------------------------------------------------------
株式会社イシイエンジニアリング
神奈川県横浜市都筑区川向町922-27
電話番号 : 045-594-7255
FAX番号 : 045-594-7256
----------------------------------------------------------------------

