第十九話 「旅の途中」(後編)
2026/08/06
「僕が倒れて意識を無くして目が覚めるまで、約三日間あったそうです。その後も、点滴したまま、横になってたんで、寝たり起きたりしてました。その時も、起きてるのか、夢見てるのか、ぼんやりしてました。
僕は、その時、ぼんやりしながら、意識を無くしてた三日の間見ていた夢を思い出したんです。それは、・・・・・・断片的に、少しづつ、思い出しました。
・・・・・・明け方に見た夢を、眠くなった昼休みに何故か思い出す、そんな経験ないですか?明け方の眠気と同じ感覚になった時、不思議に思い出す夢・・・・・・。
入院中、かなり長い時間夢うつつでした。その時に・・・・・・「夢」かな?・・・・・・まあ、それを思い出したんです。
もし、山さんがこれから話す僕の話を信じないなら、それでも構いません。・・・・・・ただ、僕が想像で、作ることが出来る話では、ないんです・・・・・・。
すみません。くどくて・・・・・・。
ただ、今も話そうかどしようか、迷っているんです・・・・・・。
ちょっと、飲みますね。・・・・・・、うまい・・・・・・、やっぱり日本酒は美味しい・・・・・・。
・・・・・・夢の中で・・・・・・、僕は昔に戻ったみたいでした。そこには、佳奈がいました。山さんには、言ったことがなかったですが、昔僕は結婚していて、佳奈は僕の妻でした。
僕たちは、学生の頃から付き合っていて、社会人になるのを待って結婚しました。佳奈は、とても美しい人で、僕は彼女を愛していました。佳奈も僕を愛してくれていたと思います。
ある時、僕は佳奈のことを殴ってしまったことがありました。なんであんなことをしてしまったのか?僕自身も、恐ろしい自分の本性に寒気を感じます。言い訳がましいですが、お酒のせいかもしれません。・・・・・・お酒のせいにしたい僕が、今でもいる、そういう言い方が、その頃から変わらない僕の本当の気持ちかもしれません・・・・・・。
ともかく、僕たちはそのことをきっかけに、どんどん離れてしまった。・・・・・・、少なくとも僕は、そう感じてました。
妻は僕を恐れている、そう感じることもありました。そう感じた時の僕は、彼女以上に自分をおそろしい・・・・・・、と感じていたと思います。自分の最愛の人に、恐ろしいと思われる、・・・・・・それは、もう愛されることはない、と確信することなんです。
冷たく長い時間でした・・・・・・。
やがて、佳奈は、僕から去っていきました・・・・・・。
それから、五年経ちます。夢の中には、佳奈がいました。彼女は僕を許してくれているようでした。もしくは、まだふたりが、あんな風になる前だったのか、とも思いました。
僕は、自分のことを見ることはできませんが、なぜか昔にもどった・・・・・・、そう感じていたからです。佳奈も、若い頃の彼女でした。
(佳奈ごめんね。僕が悪かった。)
(何が?あなたは悪くないわ。なにかあったのなら、きっと私が悪いことをして、あなたが怒ったのよ。)
(違う!そうじゃないんだ、僕は君に酷いことを・・・・・・。)
(いいえ、あなたは、優しいひと。自分を責めないで・・・・・・)
(佳奈・・・・・・、ありがとう・・・・・・、でも・・・・・・)
僕は、泣いていたみたいです。
気が付くと、佳奈は、少し遠くに行ってました。
(・・・・・・佳奈、どこに行くの?)
(あなた、どうしたの、こっちに来て)
(・・・・・・どうやって?・・・・・・おい、佳奈、ちょっと待って)
(待つわ。こっちよ。あなた・・・・・・、こっち)
僕は、必死で佳奈の方に向かおうとしました。
(・・・・・・佳奈?)
(・・・・・・)
(ごめんよ・・・・・・ゆるしておくれ・・・・・・)
(・・・・・・)
その後、彼女の姿は、見えなくなりました。
僕は、しばらく彼女を探していたようです。
やがて、また、違う夢をみたみたいですが、それは思い出せません・・・・・・。
僕は、彼女がいた夢の断片を、入院中、探してました・・・・・・。」
「・・・・・・実船君は、まだ忘れられないのかい、その佳奈さん、のことを」
「ええ、そうかもしれません・・・・・・」
「苦しいねえ」
「・・・・・・実は、退院して、彼女の実家を訪ねたんです。」
「いつ?」
「今日の昼です。」
「・・・・・・そうなんだ。行動派だねぇ、以外に」
「離婚して、もうだいぶ経ちますし、・・・・・・純情な男、って年齢でもないので」
「それで、どう?・・・・・・会えたの?」
「いえ、・・・・・・亡くなってたんです」
「えっ?」
「もうだいぶ前に、病気で、・・・・・・もしかしたら、僕を呼んでたのかもしれないですね。」
「・・・・・・」
実船は、静かにグラスに残った酒を飲み干した。
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