第二十一話 「解せない午後」(その二)
2026/08/16
・・・・・・三十分ほどして、小田代部長は戻ってきた。
その間に夏海の五年先輩の菊池も戻っていた。
「おう、菊池君、お帰り」
「ただいま帰りました」
「いやー、外はまだぜんぜん暑いねぇー。かげろうが見えそうだよ。」
「えっ、部長は、涼しい部屋にいるからいいじゃないですか?」
「まあ、そうだがな。ハハハ」
「・・・・・・なんか楽しそうですが、どうしたんですか?」
「いや、久しぶりに下柳部長と話をしたんだけど、笑っちゃたよ・・・・・・」
「へー、下柳部長、元気ですか?最近僕はGTテックさんに行かないんで、久しぶりに会いたいなぁー。」
「そうだよなー。担当じゃなくなると、遠のくよな。」
「そうなんですよ。」
「あっ、そうそう、杉崎さん。」
部長は、思い出したように夏海のほうを向き、
「さっきの件だけど、GTテックさんで少し余裕を見て納期を設定してるから、気にしないでって。上杉社長さんにも、大丈夫だから、慌てないでお願いします、と伝えておいてよ。」
「あっ、はい。・・・・・・そうですか。」
「じゃあ、頼んだよ」
「あの部長・・・・・・」
「ん、どうした?」
「上杉工業さんですが、今回みたいな話、つい最近も・・・・・・、その前も、納期遅れが出たし・・・・・・」
「最近っていつ?」
「三週間くらい前ですね」
「そうかー。」
「・・・・・・何か対策したいのですが・・・・・・」
「対策?・・・・・・例えば?」
「たとえば、納期を早めに伝えて遅れても大丈夫なようにするとか・・・・・・」
「そうか、じゃそれは試してみたらいいんじゃないかな。ただ、くれぐれも、上杉工業さんに無理のないように頼むよ」
「・・・・・・はい。」
「・・・・・・?どうした?」
「・・・・・・基本的に納期を守らない業者さんって、どう対応すれば良いんですか?」
「・・・・・・」
「私としては、業者さんの話を聞きながらお客様とすり合わせをしてるので、これ以上どうすることもできない、と思うんです。」
「・・・・・・」
「納期を守っていただかないと、お客様に返答出来ないです。」
「でも、毎回ってわけじゃ、ないんだろ」
「そうなんですが・・・・・・」
「まあ、杉崎さんの言うことも、分からなくはないが・・・・・・」
「えっ、私の言うことも・・・・・・ですか?」
「そう、も、だ。・・・・・・、まあ、暑いからな、イライラする気持ちも分かるよ。いったん落ち着いてから考えてみたら、どうかな?」
「なんか、私が悪いみたいですね・・・・・・」
「そんなつもりは、ないんだがなぁ。・・・・・・すまん、ちょっと、悪い。さっき経理部に呼ばれてね、行かなくては・・・・・・、それと、菊池君、工場長が帰ったら顔を出してくれって言ってたよ。じゃ、よろしく。」
取り残された部屋には、エアコンの音だけが静かにしている。
・・・・・・。
「何それ、意味分かんない・・・・・・!」
小さく呟いたら、余計イライラして、部長のうちわをへし折ってやりたくなった。
(ひじょうに、面白くない・・・・・・)
夏海も、営業室を飛び出した・・・・・・。(つづく)
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