有限会社イシイエンジニアリング

第十一話 「工場の社食から」

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第十話 「工場の社食から」

第十話 「工場の社食から」

2026/07/21

「この会社で、一番長くいる人って誰なんですか?」

ある昼休み、加納瞬は、社食で隣りにいた工場長に話しかけた。

「そんなこと聞いてどうする?」

工場長は素っ気ない。食べながら話すのが嫌いなのだ。

「えっ、気になるじゃないすか、そういうこと。」

「しかし、食うの早いな、お前。普通、新人は早く飯食えって言われるもんだが、なぁ。」

と正面で生姜焼きを頬張っている杉谷に言った。

「ええ、そうですね。僕も最初は良く怒られましたよ。まだ、食ってんのかって。」

「なぁ、そうだろ。良かったな、新人。お前にも特技があって。」

「短所ばかりじゃない、ってことですよ。人間誰しも。」

杉谷は、食べながら付け加えた。

「だな!」

と、二人は笑った。それを聞いてた近くの連中も吹き出した。

その中の一人が、目の前に飛んだうどんを慌てて回収しながら、

「止めてくださいよ~。工場長!飯食べてる時に笑わすの。すいません、そっちの台拭き、取ってください・・・・・・」

・・・・・・ひとしきり盛り上がってガヤガヤしているうちに、皆食べ終わって席を立って行った。

気がつくと工場長もいない。

(おいおいおい、工場長さん、質問に答えてくれてないじゃん?)

と瞬は思ったが、誰もかれも急ぎ足で社食を出ていく。

(せっかちな人ばっかりだな・・・・・・。)

話好きの瞬は、また休み時間を持て余すなと思った・・・・・・。

 

 社食を出て、歩きながら工場長は杉谷と話している。

「しかし、あの新人、すごいっすね。まだ新入社員のくせに工場長に普通に話しかけるなんて。第二工場の子じゃないですかね。」

「機械加工か?山城君のところだな?」

「だと思います・・・・・・。あの作業服についた油の感じ」

「ま、そうだな。」

「にしても、すごいわ、怖くないのかな?僕なんて二年以上かかりましたよ。工場長に作業報告に行く時でさえ、しばらく緊張してましたよ。」

「俺なんて、今でも緊張してるよ。」

古株のタケさんが横からちゃかした。

「いや~、ですよね。」

工場長を見ると、口元にうっすらえみを浮かべながら

「だけど、ほんとに・・・・・・、ちょっと変わってるな。」

と瞬のことを言った。

(ふーん、山城君のとこか。)

今度行って見るか、と思った。

「大物になるかもしれんぞ、案外、ああいうタイプは。」

昔、そう言えばあんなタイプの男がいたな、とある人物を思いながら工場長が言うと、

杉谷とタケさんは顔を見合わせて、

「そんなもんですかね?」

と首をかしげた。

「いろんなヤツが入って来る会社になったな、うちも。あんなに小さいこところで、始めたのになぁ・・・・・・。」

 工場長の瞼に、自分がまだ十代で、先代の社長の下で修業した時代が、一瞬、浮かんだ・・・・・・。

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