第九話 「分かれ道」(後編)
2026/07/17
更衣室で着替えていると、同期の佐々木が入ってきた。
「お疲れ~」
「・・・・・・お疲れ」
「おっ、ほんとにお疲れじゃん、圭介。どうした?女か?」
「はぁ?」
「じょーだん、ゲームだろ?どーせ」
「ああ、まあね」
「飯でも行かない?たまには。」
「いや、帰ったら、飯あるから。怒られるんだよ。急にそういうことすると」
「確かに。こえーもんな、お前のお袋。」
「そのとーり」
「その上で、敢えて頼もう。一人暮らしの俺に付き合ってくれ、と。一杯だけつきあえよ。な、いーだろ」
結局、駅前で一杯やることになった。
圭介も、少し飲みたい気分だった。
乾杯すると、早速佐々木が言った。
「しかし、最近、少したるんでるよなー」
「お前が?」
「いや。お前だよ」
「部署が違うのに、なんでそんなことわかるんだ、ん~?佐々木さんよ~?言いがかりはやめてもらいたいね」
「わかるんだ、これが」
「何言ってやがる」
圭介は、ビールをグッと飲んだ。
「お前辞めようとか考えてなくない?」
不意に佐々木が言った。
「えっ?」
「図星か~」
「いや。図星でも、彦星でもねーよ。考えたこともないわぃ」
「ほんとに?」
「ほんとに。・・・・・・いや、止めてくんない、マジで」
「そーか、それなら良かった」
佐々木は急に、ビールを一気にあおった。
「すみませーん。生、もう一杯」
佐々木のやつ、どうやら勘違いしたな?と圭介は思った。
でも、なんでそんな風に思ったんだろう?
全くほんのわずか、耳かきですくうほどもそんなことを考えたこともないのに・・・・・・。
しかし、思い当たる節は、ないことはない。
佐々木と一杯、また一杯と飲んでいくうちに、最近の自分の仕事への向き合い方の変化を思い返して来た。
(たしかに、まずい)
自分よりも、周りが自分の気持ちに気づいていたか?
・・・・・・。
「佐々木さー、正直に言えよ。」
佐々木は酔っていた。
「失敬なやつめ。俺くらい、正直なやつ、ちょっといないよ」
「今日俺を飲みに誘えって、誰に言われた?」
「・・・・・・えっ、何が?何のこと?」
「下手くそだな、とぼけるのが。いいから言っちゃえって。気になるから、俺、そーゆーの」
「・・・・・・。」
・・・・・・二分後。
佐々木は、罪悪感に苛まれ、白状した。何人かの先輩の名前を。
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