第十三話 「タブー」
2026/07/29
「おい、新人。今日はお前に大切なことを教えてやろう。」
瞬が、自販機で買ったコーラを取ろうとして屈んだ時、突然後ろから話しかけられた。
(確か、佐野、先輩だったな?)
瞬は、振り返りながら、記憶を探りながら思った。
「まあ、大切なことって言っても、仕事の話じゃ、ない。会社の話だ。」
圭介もコーラを買いながら、話を続けた。
「お前、第二の加納だろ。」
「あっ、はい。」
「俺のこと、知ってるか?」
「・・・・・・佐野、さん、ですか?」
「おお、よく知ってるじゃない。有名?俺。」
「ええ、かなり」
「・・・・・・。」
少し気持ちよくなって聞いたものの、なぜだか悪い予感が不意によぎった。
「まあ、ともかくだ、」
圭介は、本題に話題を戻した。
「貴重な三時休憩だ、手短に話そう。」
(俺に拒否権はないんだな)
瞬は、有無を言わせぬマイペース男に、言い返す言葉が見つからぬまま、沈黙した。
「まあ、加納、お前も、聞いて損のない話だ。そんな嫌な顔するな。・・・・・・、学校に七不思議ってよくあるだろ。」
瞬はうなずいた。
「会社にもあるんだよ。その手の話が。」
瞬が、コーラを一口飲むのを見ながら、圭介もコーラを飲んだ。
「ただ、会社のやつは、学校みたいなメルヘンチックなやつじゃない。現実のやつだ。実際の人間の話だ。だから、質が悪い。」
圭介はずっと瞬の目を見て話しているが、その瞳の奥が輝くのを見逃さなかった。
「そう、そうなんだ。ほんとに怖いのは、幽霊じゃない。人間なんだな。うちは、第五工場まであるが、実質稼働してるのは第四工場までだ。ところで、第五工場が何をしてるか知ってるか?」
「・・・・・・いえ、第五工場があることも知りませんでした。」
「ふん、そうか・・・・・・。まあ、だがそれは、知らな過ぎだが・・・・・・。それはそうとして、その第五工場では、ある人たちが働いている・・・・・・。」
「・・・・・・佐野さん、まだ時間かかりますか?休み時間、終わっちゃいますよ。」
「加納、あわてるな!慌てなさんなって。少しぐらい、大丈夫だ。遅れても。」
「いや、ヤバいっすよ。」
「さいあく、第一の佐野につかまったって、いえば良いだろ。」
「・・・・・・それって、大丈夫すか?」
(・・・・・・コイツ、噂通りのヤツらしいな)
佐野は小さく舌打ちした。
「まあ、そうだな、つづきはまた今度に・・・・・・」
と、そこに、シュッとした一見してアラフィフのイケオジ風な男が、二人の横を涼しい顔で通り、自販機でコーヒーを買っていった。
二人は、小さく挨拶した。
彼が去ると、
「あいつだよ、お前に伝えようとした男は」
「えっ、七不思議の人ですか?」
「ああ、だが七不思議じゃない。会社の五大タブーだ。」
「えっ、聞きたいっす。」
「だから、言ったろ。聞けって。」
「いや、なんか、佐野さんがやけにもったいぶるから。」
「俺のせいかよ。」
その時、無情にも休憩終了のチャイムが鳴った。
「仕方ない、また今度話すよ」
「ええっ!めっっちゃ、気になります。」
「しばらく、気にしながら生きるがよい」
「せめて、今の人の名前だけでも」
「名前か?」
圭介はコーラを捨てて歩き出した。
「みんなは、ゴルゴ13・・・・・・そう呼んでいる」
「えっ、本名ですか?」
「・・・・・・自分でかんがえろ。」
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